▷000000◁俺は市役所に勤める父さんと、小学校教師の母さんとの間に生まれた。 ▶000000◀在市役所工作的父亲,以及小学教师的母亲将我生下。 ▷000001◁物心ついた時から父さんも母さんも俺に優しく接してくれて、俺はそんな両親が大好きだった。 ▶000001◀从我有记忆以来,父亲和母亲都对我很好,我非常喜欢这样的父母。 ▷000002◁小学校に入学後、その事を同級生に話すとバカにされ……しだいに俺は孤立していった。 ▶000002◀小学入学后,当我告诉同学这件事时,他们嘲笑我……由此我逐渐被孤立。 ▷000003◁それでも、同級生と遊ぶより家に帰って父さんや母さんと一緒に遊んだ方が全然楽しかったので、 ▶000003◀即使如此,与同学玩耍相比,回家和父母一起玩是更有趣的, ▷000004◁俺は気にしていなかった。 ▶000004◀所以我并不在意。 ▷000005◁しかし、そんな俺達家族に……突如として不幸が襲いかかった。 ▶000005◀然而,突然不幸降临到了我们的家庭。 ▷000006◁あれは俺が小学4年生の頃……夏のよく晴れた、身体まで溶けてしまいそうなほどの猛暑日。 ▶000006◀那是我上小学四年级的时候……一个炎热的夏日,热得让人感觉身体都要融化的酷暑日。 ▷000007◁その日、俺達3人は海水浴場に向かうため、父さんの運転する車で山道を走っていた。 ▶000007◀那天,我们三个人乘坐父亲开的车沿着山路前往海水浴场。 ▷000008◁その山道は複雑に入り組んでおり、車幅も狭くて走行に注意が必要な道だった。 ▶000008◀那条山路弯曲复杂,车道也很窄,需要小心驾驶。 ▷000009◁父さんは当然速度を落とし、安全運転で走行していた。 ▶000009◀父亲当然安全驾驶,将速度降了下来。 ▷000010◁海水浴場まで後少しというところで……そいつはやって来た。 ▶000010◀就在离海滩不远的地方……不幸降临。 ▷000011◁見通しの悪い、急カーブ。 ▶000011◀视线不好的急转弯。 ▷000012◁父さんは速度を落としてカーブに入っていった。 ▶000012◀父亲减速进入了急转弯。 ▷000013◁しかしその時、対向車線からもの凄いスピードでこちらに突っ込んでくるワンボックスカーが1台。 ▶000013◀然而,那时,一辆货车以惊人的速度从对向车道冲了过来。 ▷000014◁父さんは必死で避けようとしたが……。 ▶000014◀父亲拼命躲避……。 ▷000015◁間に合わなかった。 ▶000015◀但是来不及了。 ▷000016◁凄まじい衝撃音と、両親の悲鳴。 ▶000016◀巨大的撞击声和父母的惨叫。 ▷000017◁そして、紅く塗りつぶされる俺の世界……。 ▶000017◀然后,我的世界被涂成红色……。 ▷000018◁俺は何とかして後部座席から抜け出すことに成功したが、その後は何が起きたか理解できずにその ▶000018◀我设法从后座成功逃出,但之后我不理解发生了什么 ▷000019◁場で泣き崩れていた。 ▶000019◀当场哭泣。 ▷000020◁数分後、警察がやって来て俺を保護し、現場の確保と交通整理を始めた。 ▶000020◀数分钟后,警察赶到并保护我,开始现场保护和交通整理。 ▷000021◁そして、ようやく自分達が事故にあったことを理解した俺は、ワンボックスカーの運転手が救急車 ▶000021◀然后,我终于理解了自己遭遇事故,看着货车司机被救护车 ▷000022◁に運ばれている光景を見て叫んだ。 ▶000022◀被送往医院的情景,我大声叫喊。 ▷000023◁「父さんと母さんを助けてください!!」 ▶000023◀「请救救父亲和母亲!!」 ▷000024◁しかし、いくら叫んでも救急隊員が父さんと母さんを助けようとする気配はなかった。 ▶000024◀然而,无论我怎么叫喊,救护人员都没有救助父亲和母亲的迹象。 ▷000025◁それも当然……父さんと母さんにはもうないんだ……。 ▶000025◀这也是理所当然的……父亲和母亲已经不在了……。 ▷000026◁……彼らの身体が。 ▶000026◀……他们的身体。 ▷000027◁そこにあるのは、醜い紅い色をした……かつて父さんと母さんだったモノ。 ▶000027◀那里有的是,涂满丑陋红色的……曾经是父亲和母亲的东西。 ▷000028◁もうあの優しい父さんと母さんは……この世界にはいない。 ▶000028◀那个温柔的父亲和母亲已经……不在这个世界了。 ▷000029◁……それから俺は数日間警察で保護され、事故の事を色々と聞かれた。 ▶000029◀……然后我被警察保护了几天,被问了很多关于事故的事。 ▷000030◁そこで、俺達の車に突っ込んできたワンボックスカーを運転していた男性は、俺達が向かっていた ▶000030◀在那里,我听说驾驶撞向我们车辆的货车的男性,在我们前往的 ▷000031◁海水浴場で強盗を働き、逃走中だった事を聞いた。 ▶000031◀海滩上抢劫后逃跑。 ▷000032◁逃げるのに必死で対向車線まで突っ込んできたらしい。 ▶000032◀拼命地逃跑以至于冲向对向车道。 ▷000033◁そして……その運転手が一命を取り留めた事も聞いた。 ▶000033◀然后……听说那个司机保住了性命。 ▷000034◁「ふざけるな……どうして父さんと母さんが死んで、あいつが生きているんだ……!!」 ▶000034◀「别开玩笑……为什么父亲和母亲死了,那家伙还活着……!!」 ▷000035◁後日、ワンボックスカーの運転手が逮捕されて俺に謝りにきたが、俺は面会を拒絶した。 ▶000035◀后来,货车司机被逮捕后来向我道歉,但我拒绝了会面。 ▷000036◁なぜなら……そいつの顔を見たら、俺はそいつを殺してしまうと思ったからだ。 ▶000036◀因为……一旦看到他的脸,我就会忍不住杀了他。 ▷000037◁全ての処理が終わり、警察から解放となったが、祖父母とも亡くなっている俺には身寄りがなかっ ▶000037◀所有处理结束后,我被警察释放,祖父母也已经去世,我已经没有亲人 ▷000038◁た。 ▶000038◀了。 ▷000039◁そこで警察が俺に紹介したのは『さざなみの園』という児童擁護施設だった。 ▶000039◀警察向我介绍的是『水波园』这个儿童保护设施。 ▷000040◁俺のような幼くして両親を失った子どもが集まる、いわば孤児院だった。 ▶000040◀像我这样年幼失去父母的孩子聚集的地方,可以说是孤儿院。 ▷000041◁他に行く当てのない俺は、その施設に行くしかなかった……。 ▶000041◀没有其他去处的我,只能去那个设施……。 ▷000042◁『さざなみの園』は元々俺が住んでいた場所からは遠く離れた、海沿いにある児童養護施設だった。 ▶000042◀『水波园』距离我原本住的地方很远,在海边的儿童养护设施。 ▷000043◁その施設は『ママ』と『パパ』と呼ばれる施設の管理者夫婦で運営されている小さな児童養護施設 ▶000043◀那个设施是由被称为『妈妈』和『爸爸』的设施管理者夫妇经营的小型儿童保护 ▷000044◁だ。 ▶000044◀设施。 ▷000045◁児童の数も10人くらいだった気がする。 ▶000045◀儿童的数量大约有十人左右。 ▷000046◁この施設では通常の学校教育の他に生活に必要な知識も教えてくれた。 ▶000046◀这个设施除了正常的学校教育外,还教授了生活所需的知识。 ▷000047◁施設にやってきた初日……俺はこれから始まる施設での生活の不安と、両親を亡くした喪失感で押 ▶000047◀来到设施的第一天……我被在设施生活的不安和失去父母的悲伤感压 ▷000048◁しつぶされそうになっていた。 ▶000048◀得几乎无法承受。 ▷000049◁そんな状態の俺が考えたのは……両親の元に行くこと。 ▶000049◀在这种情况下,我想到的是……去父母那里。 ▷000050◁つまり……自殺だった。 ▶000050◀也就是……自杀。 ▷000051◁この世界に自分を理解してくれる人間、必要としてくれる人間がいないと思った俺は、たしかにそ ▶000051◀我认为在这个世界上没有人理解我,没有人需要我,我确实想 ▷000052◁の時自らの命を捨てようとしていた。 ▶000052◀在那个时候了结自己的生命。 ▷000053◁当時の俺は小学4年……10歳の少年だ……。 ▶000053◀当时的我是小学四年级……十岁的少年……。 ▷000054◁まだ生命の価値なんてよく分からなかったし、死ねば両親に会えると信じていた。 ▶000054◀我还不太明白生命的价值,相信死后可以见到父母。 ▷000055◁その日の夜、俺は施設の近くにある海岸から海へと足を進め……。 ▶000055◀那天晚上,我从设施附近的海岸走向大海……。 ▷000056◁両親に会いに……自らの命を絶とうとした。 ▶000056◀为了见父母……我试图结束自己的生命。 ▷000057◁……そんな時、一人の少女が俺に話しかけてきた。 ▶000057◀……那个时候,一个女孩走过来和我说话。 ▷000058◁その少女の顔や名前、その時の会話は何故か思い出せない……。 ▶000058◀那个女孩的脸和名字,那时的对话,不知为何我想不起来……。 ▷000059◁ただ……俺はその少女に話しかけられて、自殺するのを思いとどまったんだ。 ▶000059◀只是……被那个女孩搭话,我打消了自杀的念头。 ▷000060◁もう少し生きてみよう……。 ▶000060◀再活一段时间吧……。 ▷000061◁そう感じる何かがあったんだと思う……。 ▶000061◀可能是有什么让我这么想吧……。 ▷000062◁それからはその少女と一緒にいる時間が多くなり、俺は両親を失った悲しみから徐々に回復してい ▶000062◀从那以后,我和那个女孩在一起的时间变得更多,我逐渐从失去父母的悲伤中恢复 ▷000063◁った。 ▶000063◀了。 ▷000064◁彼女との生活は、両親としか親しく接していなかった俺にとってとても刺激的で、楽しかった。 ▶000064◀和她在一起的生活对于只和父母亲密接触的我来说令人兴奋和有趣。 ▷000065◁ある時、お互いの夢も語り合った。 ▶000065◀有一次,我们谈论了彼此的梦想。 ▷000066◁俺は建築に興味が出てきて、将来は建築デザイナーに、ピアノが好きな彼女はピアニストになるの ▶000066◀我对建筑产生了兴趣,将来想成为建筑设计师,喜欢钢琴的她说成为钢琴家 ▷000067◁が夢だと言っていた。 ▶000067◀是她的梦想。 ▷000068◁……今にして思えば、この頃が俺の本当の世界で、一番楽しい時間だった。 ▶000068◀……现在想来,这个时候是我在真正的世界中,最快乐的时光。 ▷000069◁だけど、楽しい時間はそう長くは続かなかった。 ▶000069◀但是,快乐的时光并没有持续很长时间。 ▷000070◁俺が11歳の時、施設を管理、運営していたママが……心臓の病気で亡くなってしまったんだ。 ▶000070◀我11岁的时候,管理和运营设施的妈妈……因心脏病去世了。 ▷000071◁そして、運営することが難しくなった『さざなみの園』は、惜しまれながらも解体されることにな ▶000071◀之后,『水波园』经营变得困难,虽然令人惋惭,但最终被解散 ▷000072◁った……。 ▶000072◀了……。 ▷000073◁残された俺達は、パパが他にいくつかの児童養護施設を紹介してくれて、そちらに行くことになっ ▶000073◀剩下的我们,爸爸介绍了其他几个儿童养护设施,我们决定去那里 ▷000074◁た。 ▶000074◀了。 ▷000075◁俺と親しかった少女は、音楽関連の高校、専門学校に進学できる、全寮制の中学校に入ることにな ▶000075◀和我关系亲密的那个女孩,她决定进入一所可以升学到音乐相关高中、专科学校的全寮制 ▷000076◁った。 ▶000076◀中学。 ▷000077◁少女と話せる最後の日……俺は自殺しようとしていた所を救ってくれた彼女に、お礼を言おうとし ▶000077◀能和女孩说话的最后一天……她拯救了试图自杀的我,我向她 ▷000078◁た。 ▶000078◀道谢。 ▷000079◁こんな自分に話しかけてくれてありがとう。 ▶000079◀谢谢你和这样的我说话。 ▷000080◁楽しい時間を一緒に過ごしてくれてありがとう。 ▶000080◀谢谢你和我一起度过快乐的时光。 ▷000081◁だけど、その言葉を伝えることが……出来なかった。 ▶000081◀但是,那些话……我没能说出口。 ▷000082◁恥ずかしかったから……というのが表向きの理由。 ▶000082◀因为觉得害羞……这是表面的理由。 ▷000083◁本当は、いつも一緒にいた彼女との別れを認めたくない自分がいたからだ。 ▶000083◀其实,我不想承认和一直在一起的她分开。 ▷000084◁そして、いつかまた、きっと会える……そんな何の根拠もない、希望的観測をしていたからだ。 ▶000084◀而且,总有一天,肯定会再见面……因为我抱有毫无根据的希望。 ▷000085◁結局、少女に感謝の言葉を伝えることが出来ず……。 ▶000085◀最终,我没能向女孩表达感谢之情……。 ▷000086◁俺と彼女は、この時を最後に離ればなれになってしまう……。 ▶000086◀我和她从此分开……。 ▷000087◁パパに紹介され、俺とさざなみの園の子どもの何人かがやってきたのは、『暁の里』という名前の ▶000087◀经过爸爸介绍,我和几个『水波园』的孩子来到了一个叫『晓之里』的 ▷000088◁複合居住型の教育、職業施設だ。 ▶000088◀综合住宅型教育、职业设施。 ▷000089◁中高一貫教育で全寮制、将来は施設に関係する様々な企業に就職が出来る……という教育施設だと ▶000089◀听说是从初中到高中的一贯教育全寄宿制,将来可以在与设施相关的各种企业就业……这样的 ▷000090◁聞いていた。 ▶000090◀教育设施。 ▷000091◁この暁の里は山間部に作られたとても大きな施設だった。 ▶000091◀这个晓之里是建在山区的非常大的设施。 ▷000092◁職員、スタッフ、児童を合わせると300人を超える人が暮らしており、施設内には医療施設や運 ▶000092◀职员、工作人员、儿童加起来超过300人居住,设施内有医疗设施和运 ▷000093◁動場もあって、外部に出なくても生活することが出来た。 ▶000093◀动场,即使外出也可以生活下去。 ▷000094◁この施設に入り、俺は細身で身長の高い男……岸田洋と相部屋になった。 ▶000094◀进入这个设施后,我和一个身材瘦高的男孩……岸田洋住在一起。 ▷000095◁彼は当時、俺より1つ年上の中学2年生でパソコンに詳しく、将来はそちらの業界で働きたいと言 ▶000095◀他当时,是比我大一岁的中学二年级学生,擅长电脑,说过将来想在那个行业 ▷000096◁っていた。 ▶000096◀工作。 ▷000097◁施設に入居後、一ヶ月は施設の内部や決まりを教えられ、中学校の授業も普通に受けることが出来 ▶000097◀入住设施后,第一个月教授设施的内部布局和规定,之后可以正常上初中的课程 ▷000098◁た。 ▶000098◀了。 ▷000099◁俺の学年は5人しかおらず、少数で行われていたので、授業の内容もよく頭に入ったのを覚えてい ▶000099◀我的年级只有5个人,由于人数少,我记得课程内容能很好得 ▷000100◁る。 ▶000100◀记住。 ▷000101◁しかし……。 ▶000101◀然而……。 ▷000102◁5月初旬の金曜日……世間ではゴールデンウィークが開けた頃、それは突如始まった。 ▶000102◀五月上旬的星期五……社会上正值黄金周,那件事突然开始了。 ▷000103◁普段通り授業が終わり、寮に帰ろうとする俺達生徒に担任の教師が言った。 ▶000103◀如往常一样结束课程,准备回寝室的我们学生被班主任老师叫住。 ▷000104◁担任 ▶000104◀担任 ▷000105◁「皆さんにはこれから毎週火曜日と金曜日、そして日曜日の夕方……ある場所に行ってもらいま ▶000105◀「各位从现在开始每周二、周五,以及周日傍晚……要去一个 ▷000106◁す」 ▶000106◀地方」 ▷000107◁不思議そうな顔をする俺とクラスメート。 ▶000107◀我和同学露出疑惑的表情。 ▷000108◁しかし、担任の言うことなので従うしかない。 ▶000108◀然而,只能听从班主任的话。 ▷000109◁俺達は担任に付いていき、施設の地下にある『その場所』に入れられた……。 ▶000109◀我们跟着班主任,被带到了位于设施地下的『那个地方』……。 ▷000110◁その場所は普段俺達が勉強している教室の2倍ほどの広さだった。 ▶000110◀那个地方比我们平时学习的教室大两倍左右。 ▷000111◁地下にあるので外の光は一切届かず、蝋燭がいくつか置かれているだけなので、部屋の中は薄暗い。 ▶000111◀由于在地下,外面的光线完全无法到达,只放了几支蜡烛,所以房间里很昏暗。 ▷000112◁そんな不気味な場所に、4人の大人が待っていた。 ▶000112◀在这样的诡异地方,有四个大人在那里等着。 ▷000113◁1人は見覚えがあった。 ▶000113◀有一个人我记得。 ▷000114◁俺が初めてこの施設にやって来たときに挨拶をしていた、細い目が特徴的な男性……。 ▶000114◀我第一次来到这个设施时向他打招呼的,小眼睛是其特征的男性……。 ▷000115◁この施設の管理責任者であり、代表者だと言っていた『柏木玲二』という男だ。 ▶000115◀这个男人是这个设施的管理责任者,代表者『柏木玲二』。 ▷000116◁他の3人は白装束を着ている男が2人と、普段着の中年男性が1人だった。 ▶000116◀其他三人是穿着白色衣服的两个男人,还有一个穿着平时衣服的中年男性。 ▷000117◁部屋に入った俺達はまず、置いてあった椅子に座らされた。 ▶000117◀进入房间的我们首先被安排坐在椅子上。 ▷000118◁そして、全員が座り終わった後、柏木が話を始めた。 ▶000118◀然后,所有人坐下后,柏木开始讲话。 ▷000119◁その話は、最初はたわいもない話……施設に入ってどうかとか、友達は出来たか……と言ったよう ▶000119◀他说的,最初是无关紧要的话……进入设施后怎么样,交到朋友了吗……之类的 ▷000120◁なただの世間話だった。 ▶000120◀无关紧要的闲聊。 ▷000121◁しかし、次第に柏木の話はその方角を変え始める。 ▶000121◀然而,渐渐地柏木的话题开始转向。 ▷000122◁この世界の人間はみんな悪の心を持っている……。 ▶000122◀这个世界的人都有着邪恶的心……。 ▷000123◁それに取り付かれた人間が犯罪を起こす……。 ▶000123◀被邪恶附身的人引发犯罪……。 ▷000124◁そんなような……少し宗教じみた話だ。 ▶000124◀类似那样地……有点宗教味的话。 ▷000125◁そして柏木は、俺達の心にも悪が住み着いており、それを祓わなければならないと話した。 ▶000125◀然后柏木说,我们的心中也有邪恶,必须将其祓除。 ▷000126◁悪を祓う……? ▶000126◀祓除邪恶……? ▷000127◁祈祷師でも呼んでお祓いをしてもらうのか……? ▶000127◀请祈祷师来祓除吗……? ▷000128◁そんな事を考えていたが、それならば地下のこんな薄暗い部屋に呼ばれる理由がない。 ▶000128◀虽然在考虑这些,但是如果是这样,就没有理由叫我们到地下这样昏暗的房间里。 ▷000129◁不思議に思っていると、柏木は近くにいた中年男性を自分の前に立たせた。 ▶000129◀我感到奇怪的时候,柏木让旁边的中年男性站在他面前。 ▷000130◁そして、これからその中年男性の悪を祓い、身体を清めると話した。 ▶000130◀然后说,接下来要祓除中年男性的邪恶,净化身体。 ▷000131◁そこから始まったのは……目を覆いたくなるような光景だった。 ▶000131◀从那里开始的是……让人想要遮住眼睛的景象。 ▷000132◁柏木は前に立たせた男性の目を布で隠し、手を後ろに回させて縛り上げた。 ▶000132◀柏木让站在前面的男性用布遮住眼睛,把手绑在后面。 ▷000133◁すると、唐突にその男性が叫び始めた。 ▶000133◀然后,那个男性突然开始大喊。 ▷000134◁その内容は自分が犯してしまった小さな過ち……例えば、同居人の服を誤って踏んでしまったとか、 ▶000134◀内容是自己犯下的小错误……比如,不小心踩到同居人的衣服之类的, ▷000135◁食事を少しこぼして床を汚してしまったとか……。 ▶000135◀不小心把饭洒在地板上之类的……。 ▷000136◁そんなたわいもない、ほんの些細な事だ。 ▶000136◀这样无关紧要,微不足道的事。 ▷000137◁また、自分はどうしようもない人間だといった卑下も含まれていた。 ▶000137◀还有,自己是无可救药的人类之类的自卑话语。 ▷000138◁そこだけ見ればまだ問題はない……。 ▶000138◀只看这一些似乎还没有问题……。 ▷000139◁しかし、その行為が異常なのは中年男性が過ちを叫ぶ度に、2人の白装束の男が手にしている鞭の ▶000139◀然而,这种行为异常的地方在于,每当中年男性喊出自己的错误时,两个穿白色衣服的男人手中 ▷000140◁様なモノで男性の身体を打っている事だ。 ▶000140◀像鞭子的物体就会打在男性身上。 ▷000141◁中年男性は悲鳴をあげたが、それからも自分の過ちを叫び続けた。 ▶000141◀中年男人发出悲鸣,但之后还是继续吼出自己的错误。 ▷000142◁……そんな行為が10分ほど続いた。 ▶000142◀……这样的行为持续了十分钟左右。 ▷000143◁こんな光景を見たくなくて、1秒でもはやくこの場所から抜け出したかったが、教師や白装束の男、 ▶000143◀不想看到这样的景象,想尽快离开这个地方,但是老师和穿白色衣服的男人, ▷000144◁柏木ら大人達の監視にも似た視線がそれを許さなかった。 ▶000144◀柏木等大人们的监视般的目光不允许这样做。 ▷000145◁しばらくすると行為が終わったのか、中年男性の目隠しは取られ、腕のロープも外された。 ▶000145◀过了一会儿,这样的行为结束了,中年男性的眼罩被取下,手上的绳子也被解开。 ▷000146◁中年男性は苦痛の表情を浮かべていると思ったが……。 ▶000146◀我虽然觉得中年男性会露出痛苦的表情……。 ▷000147◁彼が浮かべていた表情は恍惚とした……その行為にとても満足したような……そんな表情だった。 ▶000147◀但是他露出的表情却是恍惚……看起来非常满足于那种行为……这样的表情。 ▷000148◁それから柏木は『この男に過ちを告白させ、苦痛を与えることで身体から悪を抜き、祓うことに成 ▶000148◀之后柏木说『让这个男人坦白错误,因为给予痛苦,邪恶便从身体中 ▷000149◁功した』と話した。 ▶000149◀成功祓除了』。 ▷000150◁そして、この行為は『絞悪』と呼び、これを繰り返し行って身体から悪を抜き去り、俗世からの脱 ▶000150◀然后,这种行为被称为『祓恶』,重复这个过程,从身体中把邪恶祓除,脱离尘世 ▷000151◁却……『脱世』を図るのがこの施設の目的だと知らされ……。 ▶000151◀……我知道了这个设施的目的是为了『脱世』……。 ▷000152◁これから週3回……夕方にこの場所で絞悪を行うことが告げられた。 ▶000152◀从现在开始每周三次……傍晚在这个地方进行祓恶。 ▷000153◁すると、一人のクラスメートが『こんなのはおかしい、自分はこんな事をされるためにこの施設に ▶000153◀然后,一个同学大喊『这样太怪了,我不是为了这样才来这个设施 ▷000154◁来たのではない』と叫び、部屋から逃げようとした。 ▶000154◀的』,试图逃离房间。 ▷000155◁しかし、すぐに教師が近づいて彼を拘束した。 ▶000155◀但是,立刻有老师走过去把他拘束。 ▷000156◁そして、彼を床に寝かせ、殴る、蹴るの暴行を繰り返した……。 ▶000156◀然后,让他躺在地上,反复重复殴打踢踹的暴行……。 ▷000157◁次第にクラスメートからは反抗の言葉が消えていき、口から漏れるのは謝罪の言葉へと変わってい ▶000157◀渐渐同学的反抗之声消失,从嘴里流露的是道歉之词 ▷000158◁った。 ▶000158◀了。 ▷000159◁それを見ていた俺達は、この場所から抜け出すことはできない……とりあえずこの場は絞悪を受け ▶000159◀看着这一切的我们,明白了无法逃离这个地方……暂时只能在 ▷000160◁るしかないと悟った……。 ▶000160◀这里接受祓恶……。 ▷000161◁それからの事は思い出したくもない……。 ▶000161◀之后的事情我不想回忆……。 ▷000162◁俺は言われるがままに目隠しをされ、腕を縛られ……。 ▶000162◀我被听从指示蒙上眼睛,绑起手臂…… ▷000163◁ここ最近の、思いついた過ちを告白した。 ▶000163◀我坦白了能想到的最近的错误。 ▷000164◁俺達が解放されたのは午後7時頃だった。 ▶000164◀我们被释放是在晚上7点左右。 ▷000165◁あまりの衝撃と身体の痛みに耐えきれず、その日はただただ眠るだけだった……。 ▶000165◀无法忍受如此巨大的冲击和身体的疼痛,那天仅仅只有睡觉的力气……。 ▷000166◁こんな事をこの施設の人間はみんなしているのかと思い、眠る直前に着替えをしていた同居人の岸 ▶000166◀想着是不是这个设施的人都在做这样的事,我看着睡前换衣服的 ▷000167◁田を見てみた。 ▶000167◀同居人岸田。 ▷000168◁すると、彼の背中には……無数の痣が残っていた……。 ▶000168◀然后,他的背上……留下了无数的瘀伤……。 ▷000169◁間違いない……岸田も絞悪を受けている……。 ▶000169◀毫无疑问……岸田也接受了祓恶……。 ▷000170◁俺が岸田の背中を見てそんな事を考えていると、不意に彼と目があってしまった。 ▶000170◀我看着岸田的背后,想着那些事,和他不经意间对上了眼。 ▷000171◁岸田 ▶000171◀岸田 ▷000172◁「ん? これが気になるという事は……」 ▶000172◀「嗯? 在意这个就表示……」 ▷000173◁「理人くんもいよいよ絞悪を受けたんだね。 ▶000173◀「理人君也终于接受祓恶了。 ▷000174◁最初は戸惑うと思うけど大丈夫!」 ▶000174◀最初会感到困惑迷茫,但没关系!」 ▷000175◁「すぐに馴れて絞悪がいかに優れているかわかるよ!」 ▶000175◀「很快就会适应,知道祓恶有多么得好了!」 ▷000176◁岸田は笑いながら俺にそう語った……。 ▶000176◀岸田笑着对我说……。 ▷000177◁そう……俺がやってきた暁の里と呼ばれる集合施設……。 ▶000177◀是的……我来到的被称为晓之里的综合设施……。 ▷000178◁その実態は、施設の代表柏木を教祖とするカルト宗教『天地真道会』の本拠地だった。 ▶000178◀其真实情况是,这个设施的代表柏木是邪教『天地真道会』教祖同时也是总部。 ▷000179◁よく考えてみると、おかしな点がいくつもあった。 ▶000179◀仔细想想,有很多奇怪的地方。 ▷000180◁まず、この暁の里から外に出るには教団が定める階級以上になり、施設の審査を受けなければなら ▶000180◀首先,要从晓之里出去,必须达到教团规定的等级以上,并必须接受 ▷000181◁ない決まりがある。 ▶000181◀设施审查的规定。 ▷000182◁この決まりを聞いたとき、暁の里では外部に出なくても必要な物はほとんど揃うので、施設外に出 ▶000182◀听到这个规定时,晓之里虽然不出去也基本都有必要的物资,所以我想不出去 ▷000183◁なくても問題は無いと思った。 ▶000183◀也没问题。 ▷000184◁しかし、よく考えてみると施設外に出られないという事は、この教団の真実を知っても外部に逃げ ▶000184◀然而,仔细想想不能出去,就是说,即使知道这个教团的真相也 ▷000185◁出せないという事。 ▶000185◀无法逃出去。 ▷000186◁それは、俺がこの施設に監禁されているのと同じ状態だ……。 ▶000186◀这个状态,和我被这个设施监禁相同……。 ▷000187◁外出が出来る審査を通った者は、強い信仰心を持ち、教団の真実を外部に漏らす心配の無い者、教 ▶000187◀能够通过外出审查的人,是拥有强烈的信仰,不用担心泄露教团真相的人,只有不会对教团 ▷000188◁団に反旗を翻す心配の無い者だけという訳だ……。 ▶000188◀扬起反旗的人才能出去……。 ▷000189◁そして、その監禁状態を助長するのが暁の里の周囲に張り巡らされた高さ5mほどの壁だ。 ▶000189◀而且,促进这种监禁状态的是晓之里遍布周围约5米的高墙。 ▷000190◁熊や猪などの侵入を防ぐ……と教師から教えられていたが、よく考えてみれば信者の脱走防止の壁 ▶000190◀老师告诉我们是防止熊、猪等动物入侵……但仔细想想这只能是防止信徒 ▷000191◁にしか思えない。 ▶000191◀逃跑的高墙。 ▷000192◁また、この施設で働いている人は小~中学時代にこの施設で教育を受けた者ばかりだと聞いた。 ▶000192◀而且,听说在这个设施工作的人都是从小学到中学时代在这个设施接受教育的人。 ▷000193◁それはつまり、この施設内の人間は皆このカルト宗教の信者だという事だ……。 ▶000193◀这就是说,这个设施内的人都是这个邪教的信徒……。 ▷000194◁この施設の実態を知って、最初はもちろんおかしいと思ったし、何とかして逃げ出そうともした。 ▶000194◀知道了这个设施的实际情况,一开始当然觉得不对劲,也想尽办法逃出去。 ▷000195◁だけど……よく考えてみると、逃げてどうする? ▶000195◀但是……仔细想想,逃跑之后怎么办? ▷000196◁身寄りのない中学生が一人で生活することが出来るのか? ▶000196◀没有亲人的中学生能一个人生活吗? ▷000197◁この施設にいれば教育は受けられるし、食事も出るし、寝床にも困らない。 ▶000197◀只要在这个设施里可以接受教育,有饭吃,也有床睡。 ▷000198◁将来の就職先も約束されている……。 ▶000198◀将来的工作也有保证……。 ▷000199◁絞悪にさえ耐えることが出来れば……生活が保証される。 ▶000199◀只要能忍受祓恶……生活就有保证。 ▷000200◁結局の所……ここがカルト宗教の施設だと知っても、俺には何も出来なかったんだ……。 ▶000200◀结果……即使知道这里是邪教设施,我什么也做不了……。 ▷000201◁それからの日々は、驚くほど早く過ぎていった。 ▶000201◀之后的日子过得惊人的快。 ▷000202◁朝起きて、授業を受け、宿題をやって就寝……。 ▶000202◀早上起床,上课,做作业,睡觉……。 ▷000203◁普通の中学生となんら変わりもしない光景だ。 ▶000203◀和普通中学生没有任何区别。 ▷000204◁……絞悪という特殊な行為を除いては。 ▶000204◀……除了特殊的祓恶行为之外。 ▷000205◁最初は意味も分からず、ただ苦痛なだけだった絞悪だったが、2ヶ月、3ヶ月と続いていくとそれ ▶000205◀一开始不明所以,只是痛苦的祓恶,但两个月,三个月过去,那逐渐在我心里 ▷000206◁が当然の行為だと頭に刷り込まれていく。 ▶000206◀变成了理所当然的行为。 ▷000207◁また、痛みを伴うこの行為は、教祖である柏木への恐怖心も同時に埋め込まれ……絶対服従と信仰 ▶000207◀而且,伴随着痛苦的这种行为,对教主柏木的恐惧也被同时灌输……以及不得不对教主 ▷000208◁を余儀なくされる。 ▶000208◀绝对服从和信仰。 ▷000209◁それは一種の洗脳と言ってもいい行為だった。 ▶000209◀这也可以说是一种洗脑行为。 ▷000210◁半年もすると俺は絞悪という行為が生活の一部となり……天地真道会の従順な信者へと飼育された。 ▶000210◀半年过去,祓恶这种行为成为我生活的一部分……我也逐渐被饲养成天地真道会顺从的信徒。 ▷000211◁中学校の教育を終え、世間では高校に入学する頃、暁の里では将来働きたい仕事について聞かれ、 ▶000211◀中学教育结束,正当外面的学生进入高中时,在晓之里会被问起将来想从事的工作, ▷000212◁それに関連した授業をいくつかのグループに分かれて学習しはじめた。 ▶000212◀然后分成几个学习小组开始学习相关课程。 ▷000213◁俺は施設に来る前、建築関連の仕事に就きたかったはずだが……無意識にこの施設内にある機械部 ▶000213◀我来到这个设施之前,应该是想从事建筑相关工作的……但是无意识地志愿在这个设施内的机械 ▷000214◁品工場で働くことを志望していた。 ▶000214◀零件工场工作。 ▷000215◁その理由は、将来もこの施設から出ないで仕事が出来るから。 ▶000215◀那个理由是,将来也可以只在这个设施工作。 ▷000216◁そう……俺はもうこの施設こそが安息の地、教祖柏木と共に居られる聖地だとすり込まれていた。 ▶000216◀是的……我已经被灌输这个设施才是安息之地,和教主柏木一起居住的圣地。 ▷000217◁そうして3年間の専門教育、現場実習を終え、俺は施設内の機械部品工場で働くことが決まり『出 ▶000217◀经过三年的专业教育,现场实习结束,我决定在设施内的机械部品工场工作, ▷000218◁家』することにした。 ▶000218◀也就是选择了『出家』。 ▷000219◁出家とはこの施設で18歳になった者が行える行為で、教団内での位をあげるために必要な行為だ。 ▶000219◀出家是在这个设施满18岁的人可以进行的行为,是为了提高教团内的地位而必要的行为。 ▷000220◁この位が高いほど教祖の信頼が厚く、脱世に近づけるとされていた。 ▶000220◀地位越高,教主的信任越深厚,离脱世越近。 ▷000221◁位は上から大如、中薩、小明、大天、中師、小弔、大輝、中俐、小無の9段階があり、小弔以上の ▶000221◀地位从大如、中萨、小明、大天、中师、小弔、大辉、中俐、小无九个等级,想要成为 ▷000222◁上級信者になるには出家しなければならない。 ▶000222◀小弔以上的高级信徒就必须要出家。 ▷000223◁当時大輝だった俺は、18歳になって出家をすることで小弔に位を上げることが出来た。 ▶000223◀当时是大輝的我,满18岁出家后,可以提升到小弔。 ▷000224◁しかし、出家する条件として外出時に使用する特別資金2万円を除き、持っている財産を全て教団 ▶000224◀然而,出家的条件是除了外出时使用的特别资金2万日元外,所有财产都 ▷000225◁に寄付しなければならない。 ▶000225◀必须要捐赠给教团。 ▷000226◁……と言っても、元々この施設では食事や日用品は無料で支給され、金銭の必要はほとんどなかっ ▶000226◀……即使这样,原本这个设施提供免费的食物和日用品,几乎不需要金钱 ▷000227◁たので出家に迷うことはなかった。 ▶000227◀所以没有犹豫出家。 ▷000228◁金銭の変わりに、出家した信者は『尊値』というポイントが与えられる。 ▶000228◀作为金钱的代替,出家的信徒会得到『尊值』这种点数。 ▷000229◁尊値は教団への貢献度を示す値で、この数値が一定値を超えると教団内での位が上がる。 ▶000229◀尊值是表示对教团贡献度的值,这个数值超过一定数值,教团内的地位就会提升。 ▷000230◁なので、この教団で働き始めた者は毎月給料では無く、尊値を得ることになる。 ▶000230◀所以,开始在这个教团工作的人每月不是工资,而是得到尊值。 ▷000231◁尊値は毎月の労働対価の他に、施設内の清掃や具合の悪い信者への介護など……教団や信者へ奉仕 ▶000231◀尊值除了每月的劳动报酬外,还有施设内的清洁和照顾身体不好的信徒等……为教团和信徒服务 ▷000232◁を行っても与えられる。 ▶000232◀也会得到。 ▷000233◁尊値を与えることが出来るのは教祖柏木とその下に就く10人の幹部信者だけなので、信者は彼ら ▶000233◀能给予尊值的只有教主柏木和他下面的十个干部信徒,所以信徒们 ▷000234◁に気に入られるように必死になって奉仕活動を行う。 ▶000234◀拼命地进行奉仕活动,讨好他们。 ▷000235◁『絞悪』で洗脳し、『尊値』のために働かせる。 ▶000235◀通过『祓恶』洗脑,为了『尊值』工作。 ▷000236◁こうする事でこの暁の里……天地真道会は膨大な労働力で莫大な資金を得て、組織として成り立っ ▶000236◀通过这种方式,晓之里……天地真道会得到了庞大的劳动力和巨额资金,作为组织 ▷000237◁ていた。 ▶000237◀运作。 ▷000238◁それから俺は、施設内の工場でひたすら働き、尊値を得て位を上げようと努力した。 ▶000238◀之后我在设施内的工厂努力工作,为了得到尊值提升地位而努力。 ▷000239◁工場内での俺の仕事は自動車に使われる部品の製造だった。 ▶000239◀我在工厂的工作是制造汽车使用的零部件。 ▷000240◁流れてきた金属の固まりを機械に入れ、手動でプレスして成形していく。 ▶000240◀把传送过来的金属块放入机器,手动压制成型。 ▷000241◁1日1000回以上この単調な作業をひたすら毎日行った。 ▶000241◀每天一千次以上一味重复这种单调的工作。 ▷000242◁仕事のやり甲斐などは考えたことはなく……頭の中は天地真道会への奉仕、そして脱世への欲求だ ▶000242◀从未考虑过工作的价值……脑海中只有为天地真道会服务,以及 ▷000243◁けだった……。 ▶000243◀脱世的欲望……。 ▷000244◁そして、教団に洗脳されてひたすら働き続けていた22歳の2月。 ▶000244◀然后,在我被教团洗脑一味持续工作直到我22岁时的2月。 ▷000245◁とある出来事が……俺を正気に戻すことになる。 ▶000245◀某个事件……让我恢复了理智。 ▷000246◁その日は水曜日だったが、暁の里での仕事はなく、音楽鑑賞のためコンサートホールに行く予定の ▶000246◀那天是星期三,晓之里没有工作,是为了音乐鉴赏去音乐厅 ▷000247◁日だった。 ▶000247◀的日子。 ▷000248◁暁の里では、年に数回こうした芸術鑑賞会を行う習慣があった。 ▶000248◀在晓之里,每年有举办几次艺术鉴赏会的习惯。 ▷000249◁この芸術鑑賞会は出家した信者向けに行われ、上質な美術、音楽などに触れて美的感覚を研ぎ澄ま ▶000249◀这个艺术鉴赏会是为出家的信徒举办的,接触高质量的美术、音乐等,通过磨练美的感觉 ▷000250◁すことで、俗世の人間との差別化を図り、自身をより高位な存在へと高めることを目的としていた。 ▶000250◀与世俗的人区分开,其目的是成为更高位的信徒。 ▷000251◁こうした教祖柏木の思想に基づき行われる芸術鑑賞会には、各界の著名人が多く参加していた。 ▶000251◀这种根据教主柏木的思想举办的艺术鑑赏会,很多各界名人都会参加。 ▷000252◁大型のバスに乗り込み、隣町の大きなコンサートホールにやってきた。 ▶000252◀乘坐大型巴士,来到隔壁镇的大型音乐厅。 ▷000253◁このコンサートホールも天地真道会が出資して建設したコンサートホールだ。 ▶000253◀这个音乐厅也是天地真道会出资建设的音乐厅。 ▷000254◁入り口には多くの警備員が待機しており、教団と関係がない者の侵入を防いでいた。 ▶000254◀入口有很多保安人员待命,防止与教团无关的人进入。 ▷000255◁だが、この警備員の目的はそれだけではない。 ▶000255◀但是,这些保安员的目的不仅仅是这样。 ▷000256◁このバスに乗っている信者の脱走を防ぐのも彼らの役目だ。 ▶000256◀防止乘坐这辆巴士的信徒逃跑也是他们的任务。 ▷000257◁最も、この芸術鑑賞会は出家した狂信的な信者しか参加できないので、脱走を試みる者はまずいな ▶000257◀最重要的是,这个艺术鑑赏会只有出家的狂热信徒才能参加,所以几乎没有人 ▷000258◁い。 ▶000258◀试图逃跑。 ▷000259◁当然俺もその一人で、この鑑賞会の目的である美的感覚を研ぎ澄ますことだけを考えていた。 ▶000259◀当然我也是其中之一,当时只考虑了这个鑑赏会的目的是磨练美的感觉。 ▷000260◁その日のコンサートは、ヴァイオリン、琴、アコースティックギターといった単体でメロディーを ▶000260◀那天的音乐会,是将小提琴、琴、木吉他等能够单独演奏的乐器作为重点 ▷000261◁奏でられる楽器に重点をおいたコンサートだった。 ▶000261◀的音乐会。 ▷000262◁超絶技巧なヴァイオリン、哀愁を誘うアコースティックギターの演奏などが繰り返され、最後にピ ▶000262◀技巧超凡的小提琴,悲伤的木吉他演奏等交替进行,最后是钢琴 ▷000263◁アノの演奏者が登場した。 ▶000263◀演奏者登场。 ▷000264◁彼女は腰まである長い金髪に、サファイアの様な青い瞳が特徴的な女性だった。 ▶000264◀她是一位长发及腰,蓝宝石般蓝眼睛的女性。 ▷000265◁ステージ中央に置かれたグランドピアノに座り、一呼吸を置いてから彼女の演奏がはじまった。 ▶000265◀坐在舞台中央的三角钢琴边,深呼吸停顿一下,她的演奏开始了。 ▷000266◁か細く、消え入りそうな高音のソロから始まった演奏は、徐々に音の幅を広げていく。 ▶000266◀从细弱,几乎消失的高音独奏开始的演奏,逐渐扩大了音域。 ▷000267◁彼女の奏でる音楽は、決して技巧を凝らした演奏ではない。 ▶000267◀她演奏的音乐,绝不是技术娴熟的演奏。 ▷000268◁それでも、聞いている者の心を震わせるような、強い感情を孕んだ演奏だった。 ▶000268◀然而,却让听者心灵震颤,充满强烈感情的演奏。 ▷000269◁そして、そんな彼女の演奏を聞いていて、俺は思い出した……いや、思い出させられた。 ▶000269◀然后,听着她的演奏,我想起了……不,是让我想起了。 ▷000270◁俺は……彼女の演奏を何処かで聴いたことがある。 ▶000270◀我……在某处听过她的演奏。 ▷000271◁急いで配られたパンフレットを開き、演奏者の名前を確認した。 ▶000271◀急忙打开发放的小册子,确认演奏者的名字。 ▷000272◁彼女の名前は……エレナ・シンプソン。 ▶000272◀她的名字是……埃琳娜·辛普森。 ▷000273◁彼女は、さざなみの園で出会ったあの少女が好きだったピアニストで、かつて一緒に演奏を聴いた ▶000273◀她是,与在水波园遇见的那个少女喜欢的钢琴家,我们曾经一起 ▷000274◁こともあった。 ▶000274◀听过的演奏。 ▷000275◁それに気がついた時、俺の頭の中にはさざなみの園で少女と過ごした日々の記憶が、フラッシュバ ▶000275◀意识到时,我脑海中在水波园和少女一起度过日子的记忆,像闪回 ▷000276◁ックのように流れた。 ▶000276◀一样流淌。 ▷000277◁そうだ……俺は暁の里に来る前は、さざなみの園という施設に居たんだ……。 ▶000277◀对了……我来晓之里之前,是在水波园这个设施居住啊。 ▷000278◁度重なる絞悪で洗脳されてしまった俺の頭は、そんな大切な記憶も塞ぎ込まれてしまっていた。 ▶000278◀被多次祓恶洗脑的我,这样重要的记忆也被封印。 ▷000279◁気がつくと、俺は涙を流しながらエレナの演奏を聴いていた。 ▶000279◀意识到时,我流着泪听着埃琳娜的演奏。 ▷000280◁そして、暁の里……天地真道会が絞悪と称し肉体的苦痛を与え、信者を洗脳しているカルト教団で ▶000280◀然后,我想起来了晓之里……天地真道会是将给予肉体痛苦称之为祓恶的, ▷000281◁ある事を思い出す。 ▶000281◀洗脑信徒的邪教。 ▷000282◁俺は今まで……何をしていたんだ……? ▶000282◀我至今到底……做了什么……? ▷000283◁激しい後悔で頭がおかしくなりそうだった。 ▶000283◀强烈的后悔让我头脑混乱。 ▷000284◁そして、さざなみの園で一緒に過ごした少女……。 ▶000284◀然后,与在水波园一起度过的少女……。 ▷000285◁彼女は今……何をしているのだろう……。 ▶000285◀她现在……在做什么呢……? ▷000286◁昔話していた、ピアニストになるという夢は叶ったのだろうか……? ▶000286◀曾经说过的,成为钢琴家的梦想实现了吗……? ▷000287◁彼女との思い出も、封印が解けたかのように頭に入ってきた。 ▶000287◀与她的回忆,像封印解开一样涌入脑海。 ▷000288◁しかし、彼女の名前や顔、初めて出会った時の記憶は何故か思い出せなかった。 ▶000288◀然而,她的名字、脸、第一次见面的记忆却不知为何想不起来。 ▷000289◁それでも、俺の頭の中には彼女にもう一度会いたいという感情が溢れかえっていた。 ▶000289◀然而,我脑海中充满了想再次见到她的感情。 ▷000290◁もう一度彼女にあって……あの日言えなかった「ありがとう」という言葉を伝えたい。 ▶000290◀再次见到她……想传达那天没说出的“谢谢”。 ▷000291◁そのために、この狂った宗教団体……天地真道会から抜け出したい。 ▶000291◀为此,我想从这个疯狂的宗教团体……天地真道会中逃出。 ▷000292◁その日、俺の洗脳は解け……この暁の里からの脱出を決意した。 ▶000292◀那天,我的洗脑解除……决定逃离晓之里。